設計事務所に相談しながら進める家づくりがどのようなものなのか、事例を取り上げて解説します。
但し、あくまで事例ですので、設計条件等により当然個別の状況が絡んでくるため、全てのケースに当てはまるということではもちろんありません。一般的な事柄については、その都度、補足したいと思います。なお、ここに登場する家族は、ひとつのモデルに過ぎません。 |
|
■Y邸新築 |
|
□住まいづくりの経過 |
|
89年5月 |
Y氏結婚。同時に、住宅財形貯蓄を開始 |
91年2月 |
Y氏長女誕生 |
93年夏 |
Y氏住宅資金用の積み立て開始 |
94年5月 |
Y氏長男誕生
現在の住まいの建替を決意。
住宅展示場をいろいろ見学。なかなか気に入ったもの、土地の条件に合うようなものが見つからない。 |
95年12月 |
Y氏、住宅雑誌の記事で見かけ、山下アトリエに電話で問い合わせ。アイデア豊富な3階建住宅の考え方に惹かれて、面談のアポイントをとる。
1週間後、顔合わせと簡単な打ち合わせ |
− |
【第1回打合せの概要】
Y氏から
・新築することを考え始めた理由や動機の説明
・現状で困っていることの確認と新築の際に実現したい希望の説明
・現況の敷地や建物の確認
・家族構成・予算(頭金・融資の受け方)
アトリエから
・設計〜着工〜竣工までの家づくりに進み方
・設計事務所の設計監理業務の考えた、進め方、
作業の範囲、これまでの設計事例のご紹介など
○とりあえず、一度、アトリエからの提案をみて今後について考えることとなる。アトリエ提案作業のために必要な簡単なアンケートに記入。
【簡単なアンケートの内容】
新築の動機/家族構成/予算/
希望する家のイメージ/空間のイメージ/
高齢者対応の必要の有無/希望室数と大きさ/
駐車場/設備に関する希望/収納/手持家具
の取り扱い/その他の希望
○なお、アトリエオリジナルの設計要望アンケートについは持ち帰って詳細事項について話し合っておいて頂く。次回に持って来て頂く。
◎特に、はっきりとした目標イメージが固まっているわけではないため、漠然とではあるが、話題にあがった言葉を手がかりに、新築の基本目標を次のように仮決めして、アトリエから提案書を作成。その案をきっかけとして今後のやりとりを考えていきましょう。ということになった。
なお、3階建がよいか2階建がよいかについてもこの目標イメージを基本に総合的に検討することにした。
・「とにかく明るい家」
・「どこにいても寒くない家」
・「省エネ」
・「開放的な家 |
− |
【提案書作成までのアトリエ作業】
役所関係調査(区役所・水道局・東京都住宅局・下水道局・住宅金融公庫)
敷地調査・既存建物等の現況調査 |
96年1月 |
【第2回打ち合わせ】
アトリエから3パターン提案。
図面をもとに、説明して、それぞれに気楽に意見交換。
概ね、こんな方向で考えていこうという原案が見えてくる。
一応、これで「お見合い成立」ということで、設計依頼を正式に頂く。
次回までに、さらに案を件とするため、前回お渡ししておいた要望アンケートの内容を確認。
・竣工希望時期、防犯対策、既存樹木の扱い等の希望、各部屋の要望(ロフト、家相、天井高、坪庭 玄関 便所、洗面所、浴室、主寝室、書斎、子供室、階段、リビング、ダイニング、キッチン、家事コーナー、客間、予備室、バルコニーなど) |
− |
※提案のメリット
いまの住まいに住みながら、敷地内の別なところに新築する場合に、増築としないやり方はないか、新宿区役所建築部建築課に問い合わせ。竣工後、旧住居は撤去する旨、記録を残すことで合意。
うまくいけば、引っ越しの手間も、工事中のアパート費用も軽減出来る! |
2月 |
【第3回打ち合わせ】
第2回で話し合った方向に従って、アトリエから計画案を作成して提案。
検討中、2つのアイデアが出てきたので、2案を模型とともに提示。
両案をもとに意見交換し、ほぼ、最終案作成の見通しが立つ。
新しい追加条件としては、
・小さい子どもでも安全な階段の形状
・ランニングコストの軽減
・設備の工夫
・収納計画
・融資手続きと建設スケジュールの検討 |
3月 |
【第4回打ち合わせ】
最終案を提案。追加のご要望をもとに案の調整を行う。 |
4月 |
■地盤調査
■設備関係の打ち合わせは事務所スタッフが同行の上、実際の物を見ながら選んでいく。
TSSショールーム
(キッチン、床暖房、浴槽等)
OZONEショールーム
(ライブラリー、TOTO、INAX、サンウェーブ) |
5月 |
■役所等との折衝
新宿区役所建築部建築課へ建替工事の打合せ:
既存建築+計画建物の配置図と周辺写真提出
土木部みどりの課と緑化計画事前協議
公庫との打ち合わせ:
融資最終案、借入額確認、各種申込書の準備
■最終設計案
計画案配置・平面・断面検討図、工程表
1/50模型提示 |
− |
■公庫融資申し込み
■プラン詳細打合・検討(予備室・タンス、収納家具の使い方・屋外水栓・ロフト・ゴミ収納・階段・戸形状・防犯・窓下収納 等) |
6月 |
■キッチンの選定作業
トーヨーキッチン見学
*足元暖房・浄水機・食洗機・シャワー水栓・床下収納庫・米びつ等についての検討 |
7月 |
■太陽エネルギー利用の検討
・OMソーラーのモデルハウス見学
・OMソーラー施工可能な施工会社候補を選定し見積り依頼
・ ソーラーシステムのシュミレーション
・平行して他社にも見積り依頼
・太陽光発電についても比較検討。補助金抽選申し込み
■平・立・断面図+模型の提出。ソーラーシステム導入を決定。
■床暖房のランニングコスト・ガス代・電気代の試算 |
8月 |
■最終見積用の図面準備
■区担当官と打ち合わせ(位置指定道路=私道の件)。同時に道路斜線を再検討
■浴槽・洗面脱衣室・室内物干金物・タオル掛等の確認
クリナップショールーム・サンウェーブショールーム・ ナスステンレス・TOTO 見学 |
9月 |
【工事見積】
A社見積額 51,700,000円(税別)
B社見積額 46,000,000円(税別)
↓
見積もりを査定後、B社との減額交渉。
一部仕様変更
■予算の考え方
・坪60万円×50坪=3,000万円・・ロフト無し
・坪30万円×10坪=300万円・・テラス・屋外階段
・水道 =最大200万円
・解体費用 =100万円
・予備費 =100万円・・調査費他
・設計料 =350万円・・・・総工事費の10%程度
以上4,000万円
(別途工事、関連費用)
・置家具・照明器具(基本照明除く)・家電製品・電話機
・特別な造作家具
・カーテン・ブラインド
・外構(擁壁工事、駐車場の整備費用、フェンス他)
・税金(不動産取得関連費用)
・登記手続き等の費用
・引っ越し、仮住まい費用‥今回不要
・地盤改良費用、埋設物撤去費用
・その他
(当初からの追加工事/増額要因)
@床面積増加(法定+ロフト=60坪・・・・10坪増加)
・2階床増加+ロフト等増加
60万円×10坪 = +600万円増加
AOMソーラー設備 = +200万円
B擁壁 = +250万円
Cその他外構(駐車場含む) =+200万円
以上の追加項目も含め予算を再度検討する。
■ハーツのショールーム・トーヨーキッチン見学、打合、比較検討(仕様等の検討と確認) |
10月 |
■B社に内定後、仕様等変更による工事金額等、支払い方法等の詰めを行う。
■全て双方合意の上、アトリエ立ち会いのもと、工事請負契約を締結。 |
12月 |
■施工期間中は、時間の許す限り、詳細な事柄について確認、調整。
・玄関ドア・電話・TVケーブル・BS・キッチンタイル・衛生陶器色などの細部の検討
・ 家具の色・床柱の色・材質その他 |
97年3月 |
■照明器具、エアコン等の追加見積り及び精算 |
97年5月 |
■新居完成 |
|
|
|
Y邸データ |
■Y邸工事費内訳 |
基礎 ・土工事 |
¥2,503,000 |
仮設工事 |
¥1,301,000 |
木工事 |
¥11,456,000 |
屋根・板金工事 |
¥967,000 |
外装工事 |
¥2,031,000 |
金属工事 |
¥1,852,000 |
左官工事 |
¥178,000 |
金属建具工事 |
¥1,935,000 |
木製建具工事 |
¥1,684,000 |
ガラス工事 |
¥1,413,000 |
タイル工事 |
¥484,000 |
塗装工事 |
¥881,000 |
内装・雑工事 |
¥3,146,000 |
システムキッチン |
¥1,964,000 |
OMソーラー |
¥1,865,000 |
電気設備工事 |
¥1,431,000 |
給排水衛生設備工事 |
¥3,068,000 |
空調設備工事 |
¥754,000 |
ガス工事 |
¥316,000 |
運搬費 |
¥271,000 |
家具(造作)工事 |
¥350,000 |
表札 |
¥30,000 |
消費税(3%/当時) |
¥1,196,400 |
工事費計 |
¥41,076,400 |
3.3u単価 |
¥684,493 |
■別途費用 |
外構・門扉・造園 |
¥360,000 |
照明器具 |
¥440,000 |
冷暖房機 |
¥360,000 |
設計・監理料 |
¥3,500,000 |
■総合計 |
¥45,736,400 |
■資金計画 |
自己資金・住宅金融公庫・年金・自治体 |
■工程 |
工事契約 平成8年9月
竣工 平成9年5月 |
|